マウンテンランニングという競技をご存知でしょうか?
10km〜15kmの距離で、高低差が8%以上ある舗装されていない山道を一気に駆け上がるこの競技。
国際陸上連盟で正式種目とされていて、本場のヨーロッパではプロ選手もいるほどの非常に人気があるスポーツ。登りの走力に加え、トラック・ロードレースにのスピード、そして持久力が求められます。
ヨーロッパを中心に盛んに行われているこのマウンテンランニングにおいて、世界を舞台に戦える日本人として頭角を現したのが飯田祐次郎選手です。
実は飯田選手、三菱電機社員として海外営業を担当するサラリーマンアスリート。
日本国内で正式な大会の無いこの競技では、常に海外での試合に出場しなければなりません。
多忙な仕事と過酷な競技の両立をさせながら、日本代表として第一線で活躍を続ける飯田さんを取材。
日本ではあまり知られていない、マウンテンランニングの面白さを教えてもらいました。
一般的によく聞かれるトレイルランニングとは、舗装されていない山岳地帯や森林を走る耐久レース。
対して、マウンテンランニングのレースは、山岳を舞台とするランニングと定義されます。
マウンテンランニングレースが盛んに行われる本場のヨーロッパでは、プロ選手が存在し、各国を転戦するほどの人気を誇る競技です。
このマウンテンランニングの日本代表として活躍する飯田選手は、世界ランキング12位の記録を持つアジアのトップランナー。
山を走るというのは本能的なところもあるので、勘というか自分の本能に従って走っています。
山に愛された日の丸ランナーの思いに迫ります。
過酷な競技 マウンテンランニング
このマウンテンランニングの特徴は、山登りの過酷さ。
およそ12キロのコースの距離に対して、8パーセント以上の高低差というのが規定にあります。
「山の神」で話題となる箱根駅伝5区の高低差がおよそ4%と言われ、マウンテンランニングはその倍以上の傾斜を駆け上がることを想像すれば、その過酷さがわかります。
マウンテンランニング規定 距離:12km前後 高低差:8%以上
箱根駅伝5区(2012年当時) 距離:23.2km 高低差:3.7%(874m)
上りの走力に加え、トラックレース・ロードレースに求められるスピード持久力が必要となります。
これまでマウンテンランニングの分野では、世界を舞台に活躍する日本人選手がこれまでほとんどいませんでした。
山登りの適性
神奈川県大磯町生まれの飯田選手は、小さい頃から箱根駅伝を沿道で応援してき多層です。
走ることが大好きで、憧れていた箱根駅伝に出場するために、名門法政大学に進学します。
ところが、全国から優秀な選手が集まる陸上部のレベルの高さについていけず、4か月で退部してしまいます。
しかし、走ることへの思いは捨てきれず、神奈川県の陸連登録選手として競技は続けていました。
そんな時、留学先のイギリス・エディンバラ大学で運命の出会いを果たします。
陸上競技が盛んなイギリスでは、夏はトラック、冬はクロスカントリーを行うことが多く、またクロスカントリーとマウンテンランニングを並行して行う選手も多いといいます。
飯田選手は、エディンバラ大学で指導していたマウンテンランニングのイギリス代表のアレックス監督に山登りの才能を見出され、マウンテンランニングにのめり込んでいきました。
球技とかでポジションを変えて大成功した選手とか、投手から野手に代えて大成功した野球選手とかいろんな話聞くんですけど。
自分にとっては同じような形で、長距離という競技の中で、トラックやロードでは大成はしなかったんですけど。マウンテンランニングと出会って、この競技が自分の強みを生かせる競技だなってしみじみ感じています。
マウンテンランニングを始めてわずか1ヶ月で出場した初めての大会で、全英7位を記録。この成績には、この競技でいけるんじゃないかと手応えを感じた飯田選手。
日本人選手の競技人口が少ないこの競技ではあるもの、コンスタントに結果を残した飯田選手は、競技開始からわずか2年で日本初のマウンテンランニング代表選手に選出されました!
サラリーマンランナー
「走ることは歯磨きするのと同じ」という飯田選手。
毎朝5時に起床して、15キロのランニングから一日が始まります。
三菱電機に一般社員として勤務する飯田選手は、得意の英語を武器にバリバリと仕事をこなす海外営業マン。
毎月のようにある海外出張がある忙しい勤務を縫って、練習時間を作り、海外で行われる大会に出場しています。
まずは仕事をして、その上で自分の目標に向かって挑戦するというのが自分の信念でもあります。
ただ、モチベーションとなっているのが会社関係の方であったり、海外の仕事を通じで知り合った人から応援してもらっているので、そういうのが仕事のモチベーションになってがんばれているというのがあります。
挑戦
「今年32歳で、今が一番いい年齢だ」という飯田選手。
20歳代の頃はスピードで勝負していたが、ここ2年くらいは後半の粘りが出てきて、コンスタントに成績が残せるようになってきた。体力だけで無く、精神力が大きいと、年齢を重ねてきたからこそ身についてきた戦い方に手応えを感じています。
精神的にも肉体的にもバランスのとれた年齢になってきているので、この陸上競技でひと花咲かせたい。
初めて日本代表としてマウンテンランニングを走るときに、日本代表の重みを感じた。県レベルの選手が日の丸を背負って走ることは夢のようなことです。
日本代表として出場して、日本人としてこの競技を戦っていきたいと思ったし、日本人でも戦えるということを示していきたい。
山でこそ生かせた自分の才能。
マウンテンランナー飯田裕次郎の挑戦は続きます。
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