「同じメニュー食べて、体調や状態を観察」 最強兄妹の舞台裏

阿部兄妹と鳥谷氏

オリンピック金メダリストの阿部一二三選手と詩選手を、柔道経験者・鳥谷敬さんが直撃しました。

東京五輪では、柔道史上初、兄妹揃っての金メダルを獲得し、最強兄妹として人々の記憶に刻まれた阿部一二三選手と詩選手。

しかし、柔道競技には、畳の上の勝敗だけでなく、減量との戦いも。66キロ級の一二三選手、52キロ級の詩選手も例外ではありません。

(鳥谷)「体重の制限があるスポーツだと思いますが、減量についてはどうですか?」
(一二三)「減量は8~9キロが多いんですけど、多くて10キロ減量する時もあります」
(鳥谷)「10キロ…!詩さんは、何か普段から食事に気を遣っていることはありますか?」
(詩)「私は意外と増えても、そこまで増えないので、好きなものを食べていますね」

普段、およそ55キロをキープしているという詩選手は、大会までの3週間、ランニングなどによって、3キロ減量することを目標にしています。

一方、兄の一二三選手は大会7週間前から減量期間に入るといいます。

(一二三)「減量中は、白ご飯とささみを食べてますね。全部自炊なんですけど、同じものをずっと食べて、自分の体調とか状態を見ています。【今日、調子いいな】とか【体軽いな】みたいな。(減量メニューも)意外と飽きないんですよ」

「ご飯が食べたい」 食事制限に過酷な打ち込み… 過酷な戦い乗り越え、勝利掴む

減量後は一目瞭然

一二三選手は、減量終盤に過酷なサーキットトレーニングにも取り組みます。12種目もの激しいトレーニングを、サウナスーツの上にトレーナーを着込み、3セット。最後の打ち込みを終えると、しばらく声も出ません。

(一二三)「ご飯が食べたいですね。あと、何でもいいから飲みたいです」

8キロの減量を成し遂げた一二三選手は、頬もこけ、まるで別人のようです。

(一二三)「試合当日だと、(計量後には)もう4キロ蔵ぐらいは戻っています。僕らは、5パーセントしか戻してはいけないというルールがあるので…」
(鳥谷)「戻す量も決まってるんですね!」
(一二三)「全員、前日に計量はあるんですけど、試合当日にランダムで呼ばれて計量しないといけないっていうのがあって…。それが(体重の)5パーセントなんです」
(鳥谷)「5パーセントを超えていたらどうなるんですか?」
(一二三)「失格で試合に出られなくなります」

減量の舞台裏をうかがった後は、鳥谷さんとの柔道対決!鳥谷さんの対戦相手は、兄・一二三選手。今回は、技ではなく襟の取り合いを競います。鳥谷さんが30秒以内に、一二三選手の襟を掴めたら、鳥谷さんの勝利です。

(鳥谷)「奥襟なんて、(柔道をやっていた)小学生の頃は禁止だったから…。人生で奥襟なんか取ったことない(笑)!」
(一二三)「柔道着の袖が短いんで、鳥谷さんのほうが有利ですよ!」

実は、番組が用意した柔道着のサイズに、【なんだか、サイズ小さくない?】と不満を漏らしていた鳥谷さん。しかし、それが吉と出て、競い合いでは有利に!

(鳥谷)「僕の袖が短いから、これイケるんじゃないの!」
(一二三)「それ、セコイ(笑)!」

和気あいあいとした雰囲気の中、24秒で襟を取った鳥谷さん。終始、笑顔に包まれた対決に、妹の詩選手や番組スタッフからも大きな笑い声が起こりました。

「兄が支えてくれた」 初めての一回戦負け 兄妹の絆が糧に

一回戦負けを経験し、悔し涙を流す詩選手

東京オリンピック以降、無敗を重ねる阿部兄妹。今や【日本柔道の顔】となった二人は、来るパリ五輪でも連覇が期待されています。そんな2人には、柔道人生の転機となった一戦があったといいます。

8年前、当時高校生だった詩選手は、相手の軸足を刈ったとみなされ、1回戦で反則負け。優勝候補として臨んだ高校1年生のインターハイでの出来事でした。

(詩)「1回戦負けっていうのは初めてで…。結構、自分の中では衝撃でした」

その試合の3週間後、落ち込む詩選手の前に現れたのが、東京の大学に進学していた兄・一二三選手。詩選手の練習に付き合い、無言の喝を入れました。あらためて、当時の映像を3人で観てみると…。

(一二三)「この映像はヤバい(笑)!」
(鳥谷)「これ、兄妹じゃなかったら大変なことになってる(笑)!」
(一二三)「兄妹でもマズいかもしれないですね」

(詩)「(映像を見て)すごく懐かしいなって思うのと同時に、めっちゃ痛かったのを覚えています。【なんでこんなに投げるんやろう】って…。【そんなことせんといて】と思いながらやってたのを覚えています」
(一二三)「僕から見ても、これはちょっとやりすぎですね(笑)。今思うと、僕もちょっと若かったんかなって。多分、大学1年生の時とかだったと思うんで」
(詩)「でも、(この出来事があって)1番、自分の柔道に向かう姿勢が変わったかなと思います。【どうしたらいいんだろう】と思っている時に、兄が本当に支えてくれたので感謝しています」

「あの試合があったから今の自分がある」東京五輪かけた死闘の24分

インタビューに答える一二三選手

妹・詩選手を支えた兄・一二三選手にも人生を左右する死闘がありました。4年前の東京五輪代表選考時、代表の座を争ったライバル・丸山城志郎(じょうしろう)選手との一戦で、選考レースは熾烈を極めました。

どちらがオリンピックに出ても金メダル最有力と言われる中での、ワンマッチ対決。一瞬の隙が命取りとなる中、一二三選手はひたすらに攻め続けました。

試合が動いたのは、試合が延長に入り20分が経過し、互いの体力が尽きかけたその時でした。大内刈りを仕掛けたのは、一二三選手。激闘の末、東京オリンピックへの切符を掴み取りました。

(一二三)「試合で勝って泣いたことって多分なかったと思うんで、初めての経験だったと思います。あんなに泣いてしまったのは。嬉しいとかよりも、ホッとしたっていう気持ちが大きかったのかなって思います」
(詩)「私も生きた心地がしなかったですね、あの24分間は」
(一二三)「精神削られたというか…。でも、あの試合があったから今の自分があるというのは、1番思いますね」

「いい意味でライバルみたいな存在」唯一無二の絆でパリの舞台


インタビューに答える詩選手

兄の背中を追いかけ、柔道の世界に飛び込んだ妹・詩選手。兄・一二三選手もまた、妹に負けじと強さを磨いてきました。そして今、2人は強い絆で結ばれ、共に高みをめざしていく同志に。

(鳥谷)「兄妹、一緒にいろんな経験をして柔道をやってきたと思うんですけど、お互いどんな存在ですか」

(一二三)「いい意味でライバルみたいな存在ですね。多分妹がいなかったら、僕はここまで強くなれてないし、妹もそうだと思うので…。2人が一緒じゃないと多分、ここまでの結果って出てないのかなって思います。今は、妹の存在が、すごく僕を刺激してくれる存在ですね」
(詩)「兄がいなかったら柔道もしてないですし、兄が日本一になったのを見て日本一になりたいと思ったり、世界一になりたいっていうふうに思ってきたので…。(兄がいてくれなかったら)ここまで本当にこれてないなと思います」

日本中から、連覇が期待されるパリ五輪での戦い。2人の心には、並々ならぬ決意がありました。

(詩)「パリの舞台では、皆さんが驚くような柔道をして、金メダルを獲って、日本に帰ってきたいと思います」
(一二三)「パリオリンピックでは、自分の圧倒的な力を出して、オール一本勝ちで優勝できるように頑張ります」

柔道で結ばれた兄と妹。最強の絆は、来る決闘の舞台で大輪の花を咲かせます。

毎週日曜日 あさ6:00  読売テレビ地上波で放送



「あすリートPlus」 は、読売テレビで毎週土曜日に放送中の「あすリート」の拡大版として、この4月にスタートした関西のアスリートたちを紹介、追跡取材してご紹介する番組です。
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(5月19日放送)

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