強豪復活を掲げ、チーム率いる「小さなキャプテン」
神戸市に活動拠点を置くバレーボールチーム、久光スプリングス。リーグで7度の優勝を誇る「強豪」です。
しかし、かつての「強豪」はここ数年、低迷が続いていました。
そんな久光スプリングスの復活を懸け、チームを率いるのは、キャプテン・戸江真奈(とえ・まな)選手。身長163㎝と小柄ながら、豊富な運動量と献身的なプレーで、チームを盛り上げます。そんな彼女が考える「キャプテン」とは…。
(戸江)「(チームを)まとめるっていうのも大事だけど、まずは自分がプレーでチームに貢献することを、今は意識してやっています。」
想いをボールに込めて…
キャプテンらしい、凛とした横顔が印象的な戸江選手。それもそのはず、お姉さんの影響で小学校からバレーボールを始めると、名門・東九州龍谷高校では全国制覇を経験、キャプテンも務めました。
ポジションは、1人だけ色の違うユニホームを着て、守備に徹する「リベロ」。相手の激しいスパイクや、サーブを受け続ける過酷なポジションを担うことは、元スパイカーだった戸江選手の競技人生において、大きな葛藤を生んだといいます。
(戸江)「私、元々スパイカーだったんで。【アタックを打ちたい】という気持ちは今も出てくるんですけど…無理なんで、身長的に。なので、その気持ちはもう別に置いといて。本当に自分の気持ちってボールに伝わると思っているので、【その人のために】っていう想いをボールに自分で伝えて。その人がスパイクを決めてくれるのも、すごく嬉しいなって思います。」
勝利への重圧を支えた「言葉」
去年10月、リーグが開幕。強豪として、常に勝利が求められる中、黒星発進となった久光スプリングス。その後も波に乗り切れず、苦しい日々が続きます。
チームの先頭に立つ責任の重さやプレッシャーを感じる日々を乗り越え、前に進もうとするキャプテンが支えにしていたもの、それは、前日本代表の監督であり、かつて5年間、久光スプリングスを指揮した中田久美(なかだ・くみ)さんの言葉でした。
(戸江)「(中田さんに)【アスリートは心が折れるのが仕事だよ】と。それをどう修正していくのかっていうのが大事なんじゃないかな、という言葉をもらいました。本当にその通りだなと思い、そこからは前向きに取り組めています。」
去年12月、リーグ戦は一度幕を下ろし、もうひとつのタイトル皇后杯全日本選手権が始まります。決戦の相手は、久光スプリングスがリーグ戦で2敗した東レアローズ。リーグ戦の悔しさを胸に挑みます。
第1セットは日本代表、石川真佑(いしかわ・まゆ)選手に得点を許してしまいますが、久光も譲りません。
二大会連続のオリンピック出場を誇る石井優希選手の活躍で、第2・第3セットを連取。優勝に王手をかけます。
後がない東レの反撃。198cmのヤナ・クラン選手にボールを集めます。第4セットを奪い、勝負はフルセットへ。
チームのために…想いを一つに、一丸となって戦う久光スプリングス。
一球入魂、最後は石井選手が決め、勝負あり。激戦を制し、久光スプリングスが皇后杯を制覇、日本一に輝きました。
「小さいことは不利でも、不能ではない」
2022年を迎え、リーグ戦が再開。三大タイトルの一つ目を勝ち取り、王者に輝いた久光でしたが、格下相手にボールを取りこぼすなど、なかなか調子が戻りません。
そのチームで、戸江選手とほぼ同じ、身長164cmのアタッカー、白澤明香里(しらさわ・あかり)選手のポテンシャルが輝きを放ちます。
チーム平均身長より10cm以上も低い小柄な体格ながらも、左打ちの小さなアタッカーは自身ならではのスタイルを模索します。
(白澤)「(自分は)身長がちっちゃいので…。フェイントとか相手のタイミングをずらしたりとか、そういうのを意識しながら、ゲームで実践しています。【この身長でも戦っていく】という姿を見せられたらと思います」
白澤選手は、大阪の強豪、金蘭会高校で中心選手として活躍し、春高バレーやインターハイで全国制覇を経験。その後、鹿屋体育大学を経て、久光スプリングスに加入するも、1年目のシーズンは試合出場の機会が少なく、もどかしい日々を過ごしていました。
いつも明るく、チームを盛り上げるチャーミングなキャラクタ―の白澤選手。辛い日々を笑顔と共に歩む彼女を支えたのが、大人気バレーボール漫画、「ハイキュー!!」(集英社)で、スパイカーとして躍動する星海光来(ほしうみ・こうらい)のセリフでした。
(白澤)「【小さいことは不利な状況だけど、不能ではない】という名言があるんですけど、小さい選手が思っていることを、星海君が作品の中でどストレートに言ってくれていて、涙が出ました。そのセリフがすごく好きです。」
激闘を制し望みをつなぐも…
リーグ戦終盤、久光スプリングスは3位のNECレッドロケッツとの最終戦を迎えようとしていました。3位以上がプレーオフに進出できる中、4位の久光にとって勝利が必須条件です。
勝利を懸けて挑んだ最終戦、先手をとったのは久光。石井選手の活躍で第1セットを先取します。続く第2セットも戸江選手の気迫溢れるプレーと白澤選手の躍動が光り、ポイントに貢献。しかし、NECも意地を見せ、第3セットを奪います。
久光のプレーオフ進出を懸けた第4セット、「勝ちたい」という気持ちを込めて、ボールを繋ぎます。最後は、石井選手がアタックを決め、崖っぷちの戦いを制しました。
プレーオフ進出を決めた久光スプリングスは、その後も勝ち進み、ついに最終戦を迎えます。
小さなキャプテンが成し遂げた強豪復活
しかし、新型コロナウイルスの影響で、最終戦は中止。初戦を制した久光がリーグ優勝となりました。思わぬ幕切れに、彼女たちの胸中は…。
(戸江)「やっぱり試合はしたかったし、素直に優勝したっていう感情にはなれなかったんですけど…。それまでの戦いぶりは自分たちにとって自信にも繋がりましたし、最後はこういう終わり方だったんでしたが、時間が経つにつれて、【優勝したって思ってもいいのかな】と思えるようになったというのが、正直な気持ちです。」
7月のサマーリーグでチームが始動、戸江選手はキャプテンのバトンを大竹里歩(おおたけ・りほ)選手に繋ぎます。
(戸江)「苦しい時もあったけど、逃げ出さず、投げ出さず、やってきてよかったなって思います。」
(スタッフ)「今後、キャプテンをまたやりたいですか?」
(戸江)「もう、お腹いっぱいです(笑)」
小さなキャプテンが成し遂げた強豪復活。「HEART of SPRING すべては【明日】のために」―新キャプテンに熱き想いを託し、久光スプリングスはこれからも、前に進み続けます!
(読売テレビ 「あすリートPlus」8月7日放送)
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