ケガにも病気にも打ち克つ不屈の男 阪神タイガース・原口文仁

インタビューに答える原口文仁選手(2019年1月24日 当時26歳)

2009年に捕手として、ドラフト6位で阪神ターガースに入団した原口文仁選手。しかし、2012年に椎間板ヘルニア、2013年に左手尺骨の骨折、2014年には右肩の脱臼と、プロ野球人生は度重なるケガとの闘いでした。

花開いたのはプロ7年目の2016年。勝負強いバッティングで1軍の舞台でブレイクしまいした。その年、育成経験野手から初めての月刊MVPを獲得し、翌年には開幕スタメンを掴み取ります。さらに2018年にはシーズン代打安打数球団タイ記録と、原口選手の勇姿は、阪神ファンの胸に刻まれてきました。

ところが、2019年1月に大腸がんであることが発覚。当時の手記には、“同じガン患者の方々、またそのご家族の方々にとって少しでも夢や希望となれるよう精一杯、治療に励みたい”と前向きに綴っていました。手術から5年が経ち、プロ15年目を迎えた原口選手。番組では、その軌跡を追いました。

「復帰した姿を見せることが使命」前向きに病気と向き合うリハビリ生活

病室で笑顔を見せる姿も

(原口)「がんが見つかった時、最初は自分でも信じられなくて、驚きもありました。僕がしっかり復帰して頑張ることで、少しでも同じがんの患者さんやそのご家族の励みになれるのなら、それが今の僕の使命だと思っています」

がんを公表して2日後に手術を受けた原口選手。約6時間に及ぶ手術は無事に成功し、大腸を13cm摘出しました。当時まだ26歳の原口選手は、すぐにリハビリを始めます。心肺機能の回復のため、歩くことからのスタートでした。

再びグラウンドに立つことを思いながら、5か月間リハビリに励みました。

(原口)「自分の名前がコールされるが想像できているので、楽しみです」

「生きて野球をやる意味」は誰かの力になること

手術直後の原口選手

2019年6月4日、復帰戦は、ZOZOマリンスタジアムでの対ロッテ戦でした。球場に駆けつけたファンは、“君がまた歩き出す日まで”、“待ってた”などと応援ボードを掲げながら「がんばれ原口!」と大きな声援を送りました。

復帰初打席は、タイムリー二塁打。感謝の思いで放った一打でした。さらにその5日後には、ホームで劇的のサヨナラヒットを打ち、甲子園が熱く沸き立ちました。その日のヒーローインタビューでは、「誰かに勇気を与えたい」という思いが強く表れていました。

(原口)「僕の活躍が力になるとすれば、こうやって生きて野球をやれる意味があると思うので、これからさらに頑張っていきたいと思います」(2019年6月9日ヒーローインタビュー)

再発の不安を抱えながら、2つの“使命”を胸に

これからもファンを勇気づける姿をー

2019年のオフ、原口選手は小児がんなど医療ケアが必要な子どもたちとその家族のための小児医療施設を訪問しました。子どもたちを勇気づけようと、ユニフォームをプレゼントし、交流を深めました。

(チャイルド・ケモ・ハウス院長 楠木重範先生)「子どものがんは非常に長期間の治療が必要で、辛いことがいっぱいあると思うんですけど、原口選手に来ていただいて関わっていただいたことは、子どもたちが頑張って前に進むためのエネルギーになると思いました」(肩書は当時)

原口選手のがんは2番目に重い「ステージ3」です。5年以内の再発の不安を抱えながらも1軍の舞台で戦ってきました。出場試合は、2020年には24試合、2021年は56試合、2022年は33試合。自分の思う成績を残せなくても、“誰かの力になる”という使命のために奮闘してきました。

そして去年9月14日、マジック1の佳境で、試合前の円陣を原口選手が任されました。

(原口)「18年ぶりのアレを全世界のタイガースファンが待ってます。その期待に応えられる日が今日来ました。みんなの喜ぶ顔をイメージしてみてください。ほら、やるしかないでしょ?さあ行こう!」(円陣での掛け声)

そして、悲願のリーグ優勝と38年ぶりの日本一を達成しました。
実は、原口選手にはもう1つ、背負っていた使命がありました。それは、闘病中だった父・秀一さんに優勝報告をすること。秀一さんはリーグ優勝の10日後に、69歳で他界しました。

(原口)「親父とは2人で練習したり、いろんなところに連れて行ってもらったり、ご飯を一緒に食べたり、いろんな思い出があるから…。本当はもっともっと野球を見てもらいたかった。優勝の前の休日に一度埼玉に帰って、親父は話せないけど自分が話しかけて、“頑張って来るわ”と最後に握手して。その4日後に優勝して、その後は会えなかったけど、看護師さんが“優勝したよ”って伝えたら、親父も目から涙流して喜んでくれていたと言っていたので。優勝の報告ができたことはよかったなと…最後の親孝行じゃないけど、いい報告ができて、1年の締めくくりは本当によかったなと思います」

今年1月、大腸がんの摘出手術から5年を迎えました。最後の検査を終えた原口選手は、穏やかな表情で病院を後にしました。

(原口)「とりあえず先生からは完治と言ってもらって、一区切りを迎えられて安心しました。完治したから終わりではなくて、大きな病気をしたからこその経験をしてきたので、これからも使命は変わらないです」

がんの完治を伝えられた日から4日後、原口選手はまた、小児医療施設を訪れました。手術を目前にした子どもにも「笑顔を忘れず前向きに」と声をかけていました。自らが病気を克服した姿を見せる意味は大きいと信じています。

(原口)「僕は野球という大きな目標、熱中するものがあったので、病気に対して前向きに進むことができました。世の中の人たちも熱中するものをたくさん見つけて、目標の大切さに気づいていただけたらなという思いで頑張ります。みんなに伝えたいことは、人生一度きりなので、仕事もプライベートも豊かにするために“楽しむ”ということを忘れずにやってほしいなと思います」

たくさんの逆境に打ち克ってきた「不屈のグッチ」プロ15年目のシーズン、使命を胸にグラウンドに立ちます。

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