陸上界屈指のナンバーワンスプリンター・青山華依
東京オリンピックの夢舞台、弾ける笑顔でスタートラインに立っていたのは、期待の若手スプリンター・青山華依(あおやま・はなえ)選手。リレーメンバー最年少の現役大学生ながらも、堂々としたパフォーマンスを見せ、走り切りました。
(青山)「初めてのオリンピックなので、楽しく走れたのではないかなと思いますし、自分の走りも納得…嬉しかったです(笑)」
まわりを笑顔にする持ち前の明るさと、飾らず自然体な姿が魅力の青山選手。高校2年生で日本選手権の表彰台に上がるなど、陸上界期待のスプリンターとして大きな注目を集めます。
その後、甲南大学に入学し、出会ったのが100m元日本記録保持者の指導者・伊東浩司(いとう・こうじ)さんでした。彼女のポテンシャルについて、伊藤さんは…。
(伊東)「あのストライドと柔らかさっていうのはすごく魅力があるので…。アジアの選手でも10秒台を走った選手はいますので、10秒台っていうところを彼女が目指す気になったら、何が何でもサポートし続けたいなと思っています」
レジェンドも太鼓判を押すポテンシャル。伊東さんの指導のもと、大学入学後も確実に力を伸ばし、パワーアップ。日本中の期待と注目を集める学生ナンバーワンスプリンターにまで成長を遂げました。
その青山選手に対し、女子100m日本記録保持者の福島千里さんも熱い期待を寄せます。
(福島)「世界の扉を1つ開けたのならば、絶対にずっと閉ざさず開け続けるべき。私の日本記録を飛び越えて、世界で戦えることを期待しています」
「ちゃんと来年走れるように、イチから治す」襲い掛かった突然のアクシデント
レジェンドたちからも大きな期待を寄せられる青山選手。夢の大舞台・東京オリンピックから2年、去年20歳になった彼女は、再び世界の舞台で走ることを想い描いていました。
(青山)「(2023年は)大きな試合があるので、それに1つでも選手として出場できたらいいなって思っています。来年がパリ五輪なので…標準記録が高かったので、11秒2台は出したいですね」
しかし、シーズンイン目前の3月、沖縄で合宿をおこなっていた青山選手を取材すると…。
(青山)「2月の上旬くらいにハードルジャンプをしていて、踏み切ろうとしたら足が内側に入りすぎて、前十字靭帯を断裂してしまいました。今年はもう終わりましたね。(試合に)出られない。今シーズンは諦めてって感じです」
練習中に前十字靭帯を断裂し、競技復帰のため手術を余儀なくされた青山選手。しかし、再建手術をおこなえば、十分に元のレベルまで復帰可能だと話す主治医の言葉を信じ、競技復帰への長い戦いを決意しました。
(青山)「あぁ、(ネイルが)無くなっちゃった。悲しいです…」
1週間前に施したばかりだったというお気に入りのネイルも、手術のため、急遽落とすことに…。万全を期して臨んだ約2時間に及ぶ靭帯の再建手術は、無事成功。
(ディレクター)「入院生活はどうですか?」
(青山)「暇です。リハビリが1日2回あるので、リハビリして、お昼食べて、またリハビリして…っていう感じです」
手術を受けた翌日から歩行の訓練を始めたという青山選手ですが、あまりの痛さに心までも悲鳴をあげたといいます。
(青山)「激痛でしたね。自力では足が上がらなくて…。痛くて痛くて。この手術を受けるんだったら、もうスポーツをしたくないです。しんどいです、辛い。リハビリは毎日ありますが、動けるようになったこと(自体)が嬉しすぎて」
心も体も痛みを伴った予期せぬアクシデント。しかし、青山選手の気持ちはしっかりと前を見つめていました。
(青山)「イチから治す。ちゃんと来年走れるように、筋力を戻したいっていうのが1番ですね」
チームメイトとの再会、恩師からの激励…懸命なリハビリに励む日々
まずは自力で歩くことを目標とし、懸命にリハビリに励んだ青山選手。努力が実り、手術から1か月後には、松葉杖なしで歩けるように。その翌日には早速、甲南大の練習に合流し、チームメイトと1か月ぶりの再会を喜びました。
(チームメイト)「華依、おかえり~!」
チームメイトからオレンジの花束を受け取り、再会を喜びます。
(青山)「(チームメイトと再会できて)嬉しかったです…嬉しかった」
チームメイトの温かさと再会の喜びを噛みしめた青山選手。術後の青山選手を側でサポートする伊東さんも、温かいながらも力強い言葉で青山選手を励まします。
(伊東)「ウォーキングの時期だけが長いからさ。1か月、2か月、3か月単位でウォーキングで土台を作って、そこからジョグし出したらあっという間だから。復帰したてで、自己記録を出している選手が非常に多いと聞いていますので、今シーズン中に一定の走れる見込みをもって、来シーズンに入っていければなと思います」
術前にあった筋力を取り戻すため、ウォーキングなどの地道なトレーニングを積み重ねる青山選手。そのなかで、今まで経験したことがなかったような気持ちも芽生えたといいます。
(青山)「久々に動いたら、(体がまだ)動かない。歩くのもひざびさなので、怖くて歩けなくなります。どこまで戻れるのかなって思います」
「まずは来年の日本選手権に」葛藤と向き合いながらも、歩みを進める
センシティブな感情と向き合いながらも、前向きに土台作りに励んだ青山選手。地道なリハビリは続いていたものの、その強度は上がり、着実にステップアップしていました。
(主治医)「時期としては筋力改善をはかっていかないといけない時期で、ジョギングできる状態に持っていくということが大切です。手術から3カ月半くらいで、ジョギングできるようになりますが、筋力が戻っていなければできません」
復活への長い道のりに挑む今の心境は…。
(青山)「走るのが怖いので、別に走りたいとも思わないですし、(走れるのが)羨ましいという気持ちもないんですよね。まだ走るのが怖くて…。パリオリンピックの前に、まず来年の日本選手権にしっかりと出場することが今、私の中での1番の目標です。元気に走れるように頑張ります!」
葛藤する心と向き合いながらも、1歩ずつ歩みを進める青山選手。心に追い風が吹く瞬間をじっと待ち、もう一度、笑顔でスタートラインに立てる日を描きます。
青山華依 AOYAMA HANAE プロフィール
2002年08月26日生まれ 20歳
大阪府出身 高津中(大阪)→大阪高(大阪)
甲南大学3年
自己ベスト
100m:11.47(2022.4 日本学生陸上競技個人選手権)
200m:23.60(2022.5 静岡国際陸上競技大会)
代表歴
2021年 東京オリンピック 2022年 オレゴン世界選手権
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(読売テレビ「あすリートPlus」5月21日放送)
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