「なんでも負けたくない」負けん気で世界との壁を超える

古林愛理(ふるばやしえり)選手、園田学園女子大学陸上競技部


世界との差が大きい競技の一つ、陸上・女子棒高跳び。その壁を超えようと奮闘する1人の大学生アスリートがいます。陸上・棒高跳び期待の星、園田学園女子大学の古林愛理(ふるばやしえり)選手です。

身長の3倍近い高さに挑む棒高跳び。世界との間に大きな壁が立ちはだかる競技ですが、この差に挑戦する負けん気こそ、古林選手の大きな魅力です。

(古林)「自分は気が強くて…。とにかく負けず嫌いなので。もう、なんでも負けたくないんです」

世界の舞台で戦う負けん気も人一倍だと話します。

(古林)「パリ五輪の決勝の舞台に立つことを、高校生の時からの目標にしていたので。日本人で、まだ決勝の舞台に立った人がいないので、自分がその第一人者になって、決勝の舞台で入賞したいです」

「一目見ただけで、100パーセントいける」器械体操から棒高跳びの世界へ

器械体操から棒高跳びの世界へ

古林選手が棒高跳びを始めたのは、高校生の時。中学校時代に参加した明石商業高校のオープンスクールで、棒高跳びと出会います。

(古林)「【今まで何の種目してた?】って、たまたま聞いてくれて。それで【器械体操やってました】って言うと、【器械体操は棒高跳びに生かせるからやったほうがいいよ】と勧めてくれました」

実は、器械体操一筋だった小学校時代。全国大会で3位に入賞するほどの実力者でした。そんな古林選手の棒高跳びの空中姿勢は、器械体操で身につけた倒立姿勢そのもの。

才能はすぐに開花し、競技歴わずか2年で高校日本記録を更新。一躍、トップ選手として大きな注目を集めました。

期待の星・古林選手の才能を見抜き、棒高跳びの世界に誘った恩師・山村博之先生(明石商業高校監督)は、彼女の第一印象をこのように振り返ります。

(山村監督)「一目見ただけで、【100パーセントいけるな】と。ああいう性格ですから、負けたくないという気持ち、競技を始めれば一生懸命やる姿勢で競技と向き合うだろう、というこちらの推測にはまったという感じですね」

(古林)「自分の性格もよくわかってくれていて、試合の時も山村先生がいてくれたら【絶対跳べる】って思えます」

恩師との強い絆で跳ぶ楽しさに目覚めた古林選手は、気づけば棒高跳びの虜に。

(古林)「跳んだ時は物音が聞こえないくらいシーンとしてて、1人の世界っていう感じで…。跳べたらふわっとする感じが好きです」

「愛理の笑顔に力をもらっている」期待の星を見守る家族の愛

娘のことを語ると頬がゆるむ

棒高跳びの世界に魅了され、日々奮闘していた古林選手。しかし、大学入学後、試練が訪れます。痛みが疼いていた腰が悲鳴をあげ、満足に練習を積めない日々が続きました。

(古林)「思い出したくないくらい辛かったし、今まで経験したことがないくらい我慢もして…。耐えて、耐えての日々でした」

練習が満足にできず、募る焦り。そんな中、大学1年生で挑んだ日本インカレでは、まさかの敗戦。負けん気が持ち味の古林選手の目にも、涙が溢れます。

(古林)「腰がやばい状態で挑んで、4m10が跳べなくて。【あぁ、2位なのか】と思うと悔しすぎて…。しかも同じ大学の子に負けてしまって、悔しすぎてちょっと泣いてしまいました」

大学入学後、怪我とコロナ禍の影響で満足いく練習ができない焦りに悩まされた古林選手。それでも、挫けることなく頑張れているのは、家族のおかげだと話します。

(古林)「両親二人とも、私のことを一番に考えてくれているので、ありがたい存在でしかないです」

(父)「【お父さん、家で練習したいねんけど、なにかできることある?どうしたらいい?】とか、常に棒高跳びの練習のことばかり考えていたので…。できる限りのサポートはしたいなと思っていました」

制限されたコロナ禍には、練習設備を作るなど、娘のために協力を惜しまないお父さん。お母さんも、そんなお父さんの隣で優しく古林選手に寄り添い、娘の心の支えとなります。

(母)「跳べないということがもどかしくて、本人がすごくイライラしているのも伝わるので…。こちらはドンと構えて、ポジティブ思考にいくように、いろんな話をしました」

あたたかく古林選手を見守る両親が、愛する娘に願うのは…。

(母)「笑顔を絶やさずに楽しんで跳んでもらいたいというのが第一です」

(父)「愛理の笑顔を見るのが楽しみでしょうがないんです。逆に、私たちのほうが愛理の笑顔から力をもらっています」

「あたりまえじゃない、この状況に感謝」リベンジの舞台・日本インカレで完全復活の跳躍

日本インカレでは完全復活の跳躍見せ初優勝、左:大坂谷明里選手(園田学園女子大学)


去年9月、大学日本一を決定する日本インカレに出場。前回、2位という悔しい結果に終わった今大会は、古林選手にとってリベンジの機会です。ライバルは、同じ大学の同級生でもある前大会女王・大坂谷明里(おおさかやあかり)選手。共に3m90をクリアすると、そこからは一騎打ちとなりました。

緊張感が張り詰める4m。古林選手は1回目で見事成功をおさめますが、大坂谷選手は惜しくも成功ならず。古林選手の日本インカレ初優勝が決まりましたが、この瞬間も古林選手の表情は変わりません。4m15からは、自己ベストの更新をかけた自分自身との戦いです。

結果、惜しくも自己ベスト更新とはなりませんでしたが、怪我を乗り越え、完全復活の跳躍を見せた古林選手の表情は、すっきりとしていました。

(古林)「久々に腰の痛みなく、棒高跳びができたことはやっぱり楽しかったし、こういう舞台で優勝できるのはありがたいことだなって感じています。腰の痛みを乗り越えられて、大坂谷っていうライバルもいてくれて…。こういう状況はあたり前じゃないので、この状況に感謝して、これからも自分らしく跳べたらいいなと思います」

「1番の目標はオリンピック」負けず嫌いと感謝の心で世界へ羽ばたく

目標はオリンピック

怪我も癒え迎えた新シーズン。グラウンドには、練習に励む古林選手と大坂谷選手の姿がありました。共に高めあい、切磋琢磨する二人にとって、お互いの存在とは…。

(大坂谷)「ライバルやけど、お互いの良い所や悪い所をちゃんと指摘しあって、自分の成長に繋げていけるようなことを言えるようにしています。信頼しているし、頼りにしています」

(古林)「明里がいなかったら、ここまで一個一個の試合に、勝負という部分でこだわれていなかったかもしれないし、自分をここまで悔しい想いにさせてくれるのは、やっぱり近い存在にいてくれるからこそだと思うので、明里がいてくれて良かったなと思っています」

負けず嫌いで壁を乗り越え、感謝の心を大切に想う若き期待の星・古林選手。彼女が見据える先は、オリンピックの舞台だと話します。

(古林)「目標はオリンピックの決勝の舞台に立つことです。そんなに簡単にはいけないと思うんですけど、今までやってきたことを全部ひっくるめて、最後にはオリンピックの決勝の舞台にやっぱり立ちたい。そこを1番の目標に掲げて、これからもやっていこうと思います」

若きドリームファイターの戦いは始まったばかり。フレッシュな負けん気と感謝の心で夢を追いかける古林愛理選手の活躍に、これからも大きな注目と期待が集まります。

毎週日曜日 あさ6:00  読売テレビ地上波で放送


新番組 「あすリートPlus」 は、読売テレビで毎週土曜日に放送中の「あすリート」の拡大版として、
この4月にスタートした関西のアスリートたちを紹介、追跡取材してご紹介する番組です。
「あすリート」の3分では伝えきれない物語や密着映像、また、これまで地上波で観られなかった陸上の関西インカレ、高校サッカー、ボーイズリーグ、中学バレーなどのスポーツ配信サービス
「あすリートチャンネル」の中継コンテンツのダイジェスト版も「あすリートPlus」で放送していく予定です。
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(読売テレビ「あすリートPlus」3月5日放送)

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