屈強な心身と圧倒的な勝負強さで魅せるー不屈の男、原口文仁
プロ野球も終盤戦。各チーム、熱い戦いを繰り広げる中、思い描く自分を目指し、不屈の精神で立ち向かう選手がいます。どんな困難も乗り越える「不屈のグッチ」、阪神タイガース、原口文仁選手です。
野球に向き合うひたむきな姿勢が、多くの野球ファンの心を掴む原口選手。入団から今シーズンまでの軌跡を振り返ります。
2009年、原口選手はドラフト6位指名、キャッチャーとして阪神タイガースに入団しますが、その野球人生は度重なるケガとの闘いでした。
2012年、椎間板ヘルニアを発症し、背番号は52から124へ。一軍の試合には出られない育成契約となりました。
さらに、2013年には左腕を骨折、翌年の2014年には右腕を脱臼。
次々と降りかかるケガとの闘いを強いられました。しかし、「不屈のグッチ」が諦めることはありませんでした。
不屈の精神とひたむきな努力が実を結び、プロ7年目の2016年、原口選手にチャンスが巡ってきます。
諦めない心でつかんだ一軍の舞台で、力強いバッティング!長い冬を乗り越え、培った「実力」と、圧倒的な「勝負強さ」で球場を沸かせました。
(原口)「サヨナラ、やりましたー!」
そのシーズン、107試合に出場すると、翌年2017年には開幕スタメンを勝ち取ります。その翌年、2018年にも代打最多安打の球団記録に並ぶ活躍で、ファンを魅了。
育成契約からの躍進劇と勇姿は、多くの阪神ファンの心にしっかりと刻まれました。
逆境からの躍進に期待が寄せられる中、ふたたび試練が…
華々しい活躍ぶりで野球界を盛り上げた2018年。しかし、翌年の2019年1月、再び原口選手に試練が与えられます。26歳という若さで、大腸がんであると診断されました。
(原口)「最初はちょっと自分でも信じられなくて。驚きもありましたし、家族の顔が一番に浮かんだっていうところです。」
原口選手はSNSを通じて、ファンに直筆でメッセージを送りました。突然の公表に、原口選手の活躍を楽しみにしていたファンからは、たくさんの励ましの言葉が寄せられました。
(和歌山のファン)「皆、待っています。どうか無事に、復帰できますように。」
(神戸のファン)「絶対、治して帰ってきてください。あなたの力が必要です。待っています。」
(原口)「ありがとうございます。頑張ります。」
大腸を13cmも切除…それでも、不屈の男が見据える先は…
手術は、無事成功。原口選手は、再び一軍の舞台で会場を沸かせる日を描いていました。
(原口)「超満員で名前コールされて、どうやって入ろうかなって。皆にお辞儀したほうが良いかな?とか、そういうイメージ。そこで活躍するのが目標だし、目指してるところなんでね。すごく楽しみですね、今から。」
仲間が球場内で練習をこなす中、ひとり、別メニューでリハビリに励む原口選手。復活へ懸ける、その思いの支えとなったのはファンの存在でした。
(原口)「(ユニフォームにサインしながら)和歌山から来てくれたんだって?ありがとう」
(ファン)「これ着て、甲子園で待ってます」
(原口)「ありがとうございます。頑張ります」
「僕の活躍が力になるならば、生きて野球をやる意味がある」―命の危機乗り越え、人々の力に
大腸がんの公表から約5カ月の2019年6月4日、原口選手の姿は、熱気満ち溢れるマウンドの中心にありました。原口選手とファンが、待ち望んでいた瞬間を迎えます。
「頑張れ、頑張れ、原口!」―この瞬間を、指折り数えて待っていた多くのファンが見守る中、復帰初打席、感謝の思いを込めた一打を放ちます。さらに、5日後の甲子園では、一打サヨナラの場面で打席が入ります。
(原口)「皆、ただいまー!」
(原口)「僕の活躍が(皆さんの)力になるとするならば、こうやって生きて野球をやる意味があると思うので、これからさらに頑張っていきたいと思います。」
命の危機を乗り越え、人々に感動を与えてくれたヒーロー、原口選手。度重なる試練に立ち向かい、不屈の精神で闘い抜いた原口選手は、ある強い思いを持つようになりました。
奇跡の復活劇を遂げた2019年の11月、原口選手の姿は、小児がんをはじめとする子どもたちの医療ケア施設、チャイルド・ケモ・ハウス(神戸市)にありました。
(子ども)「僕の夢はプロ野球選手になることです。プロ野球選手になるにはどうしたらいいですか?」
(原口)「まずはいっぱい食べること、いっぱい寝ること、そしていっぱい練習すること。勉強も頑張らないとね、オッケー?頑張れよ!」
(施設職員)「子どものがん治療というのは、非常に長期間の治療が必要です。(子どもたちにとって)辛いこともいっぱいあったと思うんですけど、原口選手に来ていただいて、関わっていただいたことは、(子どもたちにとって)とても大きなプレゼントになったと思いますし、頑張って前に進んでいくエネルギーになると思いました。」
(原口)「本当に子どもたちが純粋に、病気と闘いながら家族と明るく前向きに頑張ってる姿を目にして、僕自身も本当にもっと頑張らないといけないな、この子たちがもっと勇気をもてる励みになるようにもっと活躍して喜ばせてあげたいな、という気持ちになりました。」
「泣くことはNGではない」―幾度の困難も乗り越えた「不屈のグッチ」の「負けない心」
さらに、がんの早期発見・早期治療の大切さを伝えるイベント、「原口文仁チャリティーランフェスティバル(和歌山県・すさみ町)」を開催。トークショーにも登壇し、自身の思いを伝えます。
(原口)「辛いことのほうが多いと思うんですけど、目標を持つことによって、自分が頑張ろうと前向きな気持ちになれるので、本当に…とにかく明るく過ごしてほしいなと思いますね。」
(観客の少女)「そういう前向きな気持ちになっている時でも、泣くことはNGなんですか?」
(原口)「もちろん、泣くことは悪いことじゃないと思います。泣くことで、自分の溜まっているものを全部出して、すっきりして次に向かっていく気持ちになれれば、全然いいと思います。」
「泣くことはNGではない」―それが、度重なる困難に立ち向かい、常に前を向いて頑張ってきた原口選手の答えでした。
若手の台頭で、出場機会に恵まれなかったコロナ禍の2年も、強い気持ちと不屈の精神で、走り続けました。
2022年1月、30歳で迎えるシーズンに懸ける思いを、力強く語ります。
(原口)「残りの野球人生を考えた時に、ベンチで座って出番が来るまで待ってるよりも、もっと試合に出たいというか。限られた野球人生のなかで、もっと野球がしたい。今年は、マジでいくよ、本当に。俺、自信あるから。俺の存在、忘れられてるぐらいでしょ?根拠のない自信よね、絶対いけるとしか思ってない」
2022年8月、言葉通り、一軍に昇格。2年ぶりのホームランを放ち、球場の盛り上がりは最高潮に。翌月9月も、首位ヤクルト相手に値千金の同点タイムリー!帰ってきた「不屈のグッチ」、圧倒的な存在感を見せつけます。原口文仁、30歳。自分自身の野球人生、そして、ファンや子どもたちのために。思い描く自分を目指し、いまだ夢の途上です。
(読売テレビ 「あすリートPlus」 9月11日放送)
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