プロ野球選手になりたい!2人のドラフト候補に迫る運命の日
数々のドラマを生んできた運命の日「プロ野球ドラフト会議」が今月20日に行われる。
この日へ向け、腕を磨いてきた2人のドラフト候補。1人は大学球界屈指の剛腕・大阪経済大学の才木海翔投手。そしてもう1人は滋賀の近江高校出身、3年前、金足農業との一戦で甲子園を沸かせ、現在は社会人野球・西濃運輸でプレーする林優樹投手。
今年こそ、プロ野球選手として、夢の舞台へ。そのときを待つ若者2人が抱く想いを取材した。
近江の左腕、林優樹が再びドラフトの舞台へ
(林)「社会人に入って、まともにテレビ取材を受けたことなかったんで、めっちゃ緊張しますね。」
久しぶりのテレビ取材に少し緊張気味の林。高校時代は甲子園を彩った一人だった。
2018年、夏の甲子園。今も語り継がれる滋賀・近江と秋田・金足農業の準々決勝。1点リードで迎えた9回ウラ、マウンドに立つ林はノーアウト満塁のピンチを迎えていた。
このチャンスを生かし、金足農業が放ったのは、サヨナラ2ランスクイズ。劇的な逆転負けを喫した近江。当時2年生だった林は泣くことしかできなかった。
翌年(2019年)の夏、絶対的なエースに成長した林は滋賀大会4試合を無失点で制し再び甲子園へ。チームカラーの近江ブルーに染まるアルプスを背に腕を振った。
その後、高校日本代表に選出。初めて日の丸を背負い、掴んだ手応え。共に戦った同期は現在、プロで活躍するスター選手たちだ。ロッテの佐々木朗希、ヤクルトの奥川恭伸、阪神の西純矢。林も当然プロ志望届を提出し、運命の日を待った。
迎えたドラフト会議当日。林の名前が呼ばれることはなかった。高校で記者会見に挑む林。前を向いたまま、静かに涙を流し17歳の少年は言葉を絞り出した。
(林)「一番に思ったのは、こんなにも応援してもらってるんだなとすごく感じたので、そういう人たちを裏切ったらアカンなって思っていたので。3年後にプロの世界に行って、成長した姿を見せたいなと思います。」
ただ一点を見つめていた目に、やがて光が宿る。冷静に現実を受け止め、3年後に誓いを立てた。
「待ってるからな!」今年こそプロへ…社会人野球で腕を磨く
卒業後、プロ入りへの一番の近道と、西濃運輸に入社。
しかし、1年目の登板はなく、2年目には左ひじを故障してしまう。ふとテレビを見れば、プロで活躍する同学年の仲間たち。「自分は何をしているんだろう・・・」。
悔しさでその画面を消すこともあった。募る焦り。そんな気持ちを振り払ってくれたのは奇しくも見ることがイヤになっていた高校ジャパンの仲間だった。
(林)「連絡を頻繁に取るのはロッテの佐々木朗希なので、連絡するたびに、待ってるからなっていうのを言ってくれるので、自分もなんとか頑張ろうってすごく思いますね。」
はるか遠くに感じていた仲間が自分を待っている。地道なトレーニングで130キロ台だった球速はMAX146キロを計測するまでになった。「ここで諦めたら悔いが残る」と自らに言い続けた言葉が、アマチュアトップクラスの投手へと自身を押し上げた。
(林)「西濃運輸に入るときに3年目でプロに行くっていうのは一つの自分の目標として立てましたし、家族とも約束したので、今年に懸ける思いは自分の中でもすごくあるので、やり切りたいなって思います。」
もう一人のドラフト候補 関西ナンバーワンの剛腕・才木海翔
そして、もう一人のドラフト候補は最速153キロのストレートを投げ込む剛腕。
大阪・豊中市出身で大阪経済大学のエース・才木海翔(22歳)。
今年3月、プロとの腕試しに臨んだオリックスとの練習試合では自慢のストレートで4回を無失点に抑え、パ・リーグチャンピオンを力でねじ伏せた。
(才木)「自分のアピールの場やと思っていたので、8割方ストレートでずっといきました。自分的には、今日はいいアピールができたんじゃないかなと思います。」
使い込まれたクラブには「就活中!!無限の可能性」の刺繍。
(才木)「普通の就職活動はしてないですね。スーツ着てピシっとするとか、たぶん僕には向かないので。できない分、野球でカバーできたらいいなと思って今までやってきたので。」
希望の就職先は「プロ野球」
希望の就職先は【プロ野球】。スカウトが見つめるダイヤモンドのど真ん中で腕を振る。春のリーグ戦では防御率1.16をマークした。
さらに関西オールスター5リーグ対抗戦では優秀選手賞を獲得。関西ナンバー1、そう呼ばれる実力を証明した。
(才木)「何位でも指名かかるように、自分は今から結果をだしていくだけやと思うんで。練習も試合も全部、精一杯やっていこうと思います。」
小学生の頃から通う焼肉店。そこで22歳の素顔を聞いた。
(お店の方)「うれしい、涙が出る、感動してな、おばちゃん!絶対にできる子やと思うんです。顔は男前やし、ものすごいまじめ!最高!大谷翔平みたいに頑張ってほしい。」
地元の期待を背負い、2人の実力が試される夏が始まる。
「心臓バックバク!」ドラフト目前 不安に押しつぶされそうな日々
ドラフト会議まであと3か月。ロッカールームでうつむく才木。笑顔で顔をあげるも、様子がおかしい。
「やばいっすね。指名されなかったら無職っすよ・・・マジで・・・」
この春、アピールに成功したはず。しかし、才木の口からこぼれるのはネガティブな言葉ばかりだ。
(才木)「今もうバックバクですけどね。野球のこと考えたくない、逃げてぇ、こわい…。寝るときも、ふと、あした野球か…とか、ドラフトまであと3か月!とか、ソワソワして全然寝られへん。」
日に日に増していく不安な気持ち。春の自信に満ちた表情から一変、遠くを見つめ、どこか上の空。
一度見せた弱気はピッチングにも影響してしまう。スカウトが最終チェックに入る秋のリーグ戦は、3回3失点で降板。思うようなピッチングはできなかった。
試合後、子供のようにうなだれ、不安な胸の内を吐露した。
(才木)「もうイヤや、もう。しんどいっすわ。自分が自分じゃないみたいっすね、今は。」
プロへの就活最後のアピールとはならなかったが、実力はこの1年で十分見せつけた。採用通知は届くのか。指名を信じて、そのときを待つ。
最後の猛アピール 林優樹が社会人野球最高の舞台で躍動
もう1人のドラフト候補。林優樹はアピールの最終盤を前に集中していた。社会人野球の甲子園ともいえる都市対抗野球(7月22日ENEOS対西濃運輸)。
全国の舞台に帰ってきた林が、マウンドで躍動する。磨き続けてきたストレート。「オレもプロでやれる。」社会人最高峰の舞台でその力を示した。
(林)「東京ドームのマウンドで結果を出すために、今までずっと社会人野球をやってきたので今自分が持ってる力はしっかり出せたんじゃないかなと思います。」
4歳で野球を始めたときから、将来の夢はプロ野球選手。3年前の約束を叶えるため、腕を振り続けた。ドラフト会議は目前に迫る。2人の運命は果たして!?
(読売テレビ「あすリートPlus」10月16日放送)
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