久光スプリングス 今年コートを去った選手たち

引退する選手に向け行われたセレモニー

人口約7万人の佐賀県鳥栖市にできたサロンパスアリーナ。バレーボール女子・Vリーグ1部に所属する久光スプリングスが今年、神戸から練習拠点を移しました。
今年5月、その体育館に長蛇の列ができました。久光スプリングスの引退セレモニーマッチを見ようと約1000人のファンが駆けつけたのです。
アスリートにとって「引退」は、物語のひとつのフィナーレ。久光スプリングスでは今年、6人の選手がコートを去りました。新たな人生を歩む3選手を追いました。

ひたむきにチームのために…戸江真奈

現役最後の公式戦を終えて

10年のプロ生活を終えた戸江真奈(とえ・まな)選手。2020年から2シーズンキャプテンを務め、低迷していたチームを3シーズンぶりの優勝に導きました。
戸江選手がバレーボールを始めたのは小学生の頃。高校バレーの名門・東九州龍谷高校に進み、2011年の“インターハイ”・2012年の“春高バレー”で全国制覇を成し遂げました。2013年に久光スプリングスに加入し、リベロのポジションでチームに貢献。体を張った献身的なプレーは、幾度となくチームをピンチから救いました。

(戸江)「キャプテンとしてまとめるというのも大事だけど、まずは自分がプレーでチームに貢献することを意識してやっています。自分の気持ちは本当にボールに伝わるので、『レシーブしてあげよう』という思いをボールに込めて、繋がったボールをスパイカーが決めてくれた時はすごく嬉しいです」

2022年シーズンはキャプテンを大竹里歩(おおたけ・りほ)選手に引き継ぎました。このシーズンは怪我や若手の台頭もあって出場機会が少なくなり、戸江選手は引退を決断。今年4月に、21年間のバレーボール人生で最後の公式戦を迎えました。チームのためにひたむきにプレーする戸江選手の姿はファンを魅了しました。

(ファン)「必死になってボールを繋いで、点に結びつける一生懸命さが好きですね」

試合後、彼女はすがすがしい表情でインタビューに答えてくれました。

(戸江)「やり切ったという感じで、幸せな気持ちでいっぱいです。悔いはまったくありません」

「プロ生活すべてが宝物」小さなオポジット 白澤明香里

引退セレモニーで写真撮影をする白澤明香里選手

Vリーグの強豪、久光スプリングスの中で164cmながらオポジットとしてチームに貢献してきたのがサウスポーの白澤明香里(しらさわ・あかり)選手です。

(白澤)「私は身長が小さいので、フェイントとかタイミングをずらしたりとかを意識しながらゲームをやっています。この身長でも戦っていく姿を、皆さんに見せられたらと思います」

奈良県出身で、大阪の金蘭会高校時代にはキャプテンを務め、全国制覇を経験。大学卒業後、2020年に久光スプリングスに加入しますが、プロのレベルの高さに苦しみ、出場の機会は限られていました。
それでも、“高さがない”と言う弱点をカバーすべく、自分の役割を模索し続けてきました。去年5月のインタビューで白澤選手は次のように答えています。

(白澤)「このチームの中でももう中堅選手ですし、先輩たちと後輩たちの繋ぎ目にならないといけない役割でもある。昨シーズンはキャプテンの戸江選手がずっとそれを意識してやってくれていて、チームは本当にやりやすくて試合することもできたので、次は私がそういう役割を担えたらなと思います」

しかし、限界を感じることも多く、葛藤の中、25歳での引退を決意しました。3年間のプロ生活は彼女にとって宝物だったと言います。第二の人生は、マネージャーに転身し、陰でチームを支えていく道を選びました。

(白澤)「約3年間、私がここで過ごした時間は本当に宝物で、ここで出会った仲間も応援してくださったファンの皆さんも、支えてくださった全てが私の人生で大きなものになりました。自分に『頑張ったよ、お疲れさま』と行ってあげたいです」

(ファン)「小さくても他の選手に負けないように、ジャンプしたり力強いスパイクを打ったりする姿にとても力をもらってきました。これから第二の人生も応援していきたいです」

久光ひと筋13年 日の丸も背負い2大会連続五輪出場 石井優希

会見では笑顔も

もう1人、チームにとって、バレーボール界にとって大きな存在がコートを去ることを決めました。2016年のリオオリンピックに出場し日本の5位に貢献、東京オリンピックにも出場した石井優希(いしい・ゆき)選手です。
彼女のバレーボール人生は決して順風満帆ではありませんでした。東京オリンピックの延期で体と心のバランスが取れず、競技を続けることが難しくなることもありました。

(石井)「すごく苦しいんですけど、でも本当に…選手もスタッフも待ってくれている」

葛藤の中でも、ひとたびコートに立てば気持ちを奮い立たせ、力強いスパイクで得点を重ね、チームを勝利に導いてきました。
今年4月、現役最後の公式戦もチームを牽引し、東レアローズ相手にストレートの白星で有終の美を飾りました。
32歳、24年間のバレー人生の引退の日に、石井選手は感謝の言葉を述べました。

(石井)「楽しいことや嬉しいことばかりではなくて、苦しいことの方が多かったんですけど、皆さまの声が私の支えになって、それがパワーになって優勝を何度も経験させてもらったなと思うので、本当に感謝しています」

(ファン)「1番最初にファンになったのが優希さんで、優希さんに出会ってなかったらバレーボールをこんな好きになっていなかったと思うので、本当に感謝しています」

新たなステージの目標は…。

(石井)「家族を持ちたいなと思うので、そこがひとつの目標です」

その言葉通り、石井選手は今年8月に結婚を発表しました。新たな道へ歩み出した選手たち。また次の物語が始まります。

 毎週日曜日(第4週は除く)あさ6:00  読売テレビ地上波で放送

*ラグビーワールドカップ準々決勝の中継ため17日(火)深夜放送


「あすリートPlus」 は、読売テレビで毎週土曜日に放送中の「あすリート」の拡大版として、4月にスタートした関西のアスリートたちを紹介、追跡取材してご紹介する番組です。
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(10月17日放送)

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