昨年の6月13日、全日本大学駅伝関西地区選考会で20秒差に涙をのんだ翌日から、今のチームは動き出した。嶋谷鐘二郎(4年、関大一)率いる陸上競技部男子ロングパートは目覚ましい成長を続け、20年ぶりとなる出雲駅伝出場を果たすなど新たな歴史を刻んでいる。
―エースの覚悟―
関西大学(以下、関大)のエースは亀田仁一路(3年、県立姫路商)。入部当初から関大記録を塗り替える好記録を残し、2年時に関西インカレ10000㍍優勝、日本学連選抜で全日本大学駅伝に出場し1区区間6位、今年は日本インカレ10000㍍で4位入賞・日本人1位など、確かな実力で関東勢をも圧倒する記録を残している。また、陸上競技が大好きな亀田は、練習だけでなく私生活から競技第一で行動。競技に懸ける思いの強さは、チームにいい刺激を与えている。だが、大きなけがもなく着実に練習を積み重ねながらエースとして存在し続けるのは容易なことではない。周囲の期待がプレッシャーとなり、悩まされることもある。今年の関西インカレでは5000㍍3位と納得のいく結果を残せず悔しさをにじませたが、「エースと言ってもらえるのはありがたいことだけど、この重みを跳ね返していかないと日本一にはなれない。プレッシャーを自分の強みに変えていきたい」とエースとしての覚悟を語った。そして、次戦の選考会では終始首位を守り抜き1位でゴール。関大の出雲駅伝出 場に貢献するとともに、2年連続となる全日本大学駅伝に日本学連選抜として選出された。努力を続ける亀田の勢いは、ますます加速するだろう。
―ナンバーワンしかいらない―
「亀田だけじゃない、チーム全体の底上げが必要」。関大には幅広い層の選手が在籍している。推薦入学者も少なく、競技に対する考え方や走力の差も大きいのが事実。そんなチームをまとめ、導いているのが駅伝主将の嶋谷だ。関西インカレで3000㍍障害2連覇を果たすなど、男子ロングを大きく成長させた立役者でもある。昨年の選考会は5位に散るも、後悔する暇もなく翌日から新チームを発足。目標を『予選会1位通過』に定めると、試行錯誤をしながらチームの走力アップを図る。夏季の練習を乗り越えた選手たち全員が自己ベストを更新。さらに冬季練習、春の強化練習を経験したのち、選考会でもほとんどの選手が自己ベスト・シーズンベストを更新した。結果は惜しくも4位となり、全日本大学駅伝への出場はかなわなかったが、20年ぶりに出雲駅伝への出場権を獲得。チーム全員で目指したからこそ得られた結果だった。しかし、出雲駅伝の結果は振るわず17位。それでも、「やっとスタートラインに立てた。来年の出雲や全日本につなげていくには、丹後駅伝まで4年生が背中で見せる部分が大きくかかわってくる。最後まで走りで引っ張っていきたい」。4年生として、主将として、この1年で作り上げたチームの集大成を発揮する時が来た。
―関大旋風を巻き起こす―
昨年の丹後駅伝は4位。嶋谷・大髙肇(4年、関大北陽)、亀田以外の中間層のレベルアップが課題だった。冬季練習中のけが人や不調の選手の多さから課題を克服できないままになり、6月の選考会では1年生を頼る形となった。悔しさをばねに夏合宿を乗り越え、課題克服とともにチーム全体が大きく成長を果たした。丹後駅伝まで残りわずか。昨年の順位を上回ることはもちろん、優勝を狙う。11月19日、この1年で進化した関大の超戦が幕を開ける。
【文責:関西大学体育会本部関大スポーツ編集局 小西菜夕】
主な戦績
▽亀田仁一路(3年)
21年 関西インカレ 10000㍍優勝
全日本大学駅伝 1区6位
22年 関西インカレ 5000㍍3位
日本インカレ 10000㍍4位
全日本大学駅伝 1区9位
▽嶋谷鐘二郎(4年)
21年 関西インカレ 3000㍍障害優勝
22年 関西インカレ 3000㍍障害優勝
近畿選手権 3000㍍障害優勝
日本インカレ 3000㍍障害出場
▽関西大学陸上競技部
21年 丹後駅伝 4位
22年 全日本大学駅伝選考会 4位 出雲駅伝出場権獲得
出雲駅伝 17位
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