【ラグビー】衝撃の60点差 もう誰のせいにもしない、vs コカコーラで近鉄ライナーズが示した進化と試練
2021年03月21日 / ラグビー
2021年03月21日 / ラグビー
2月14日に開幕したトップチャレンジリーグもあれよあれよという間にクライマックスです。
グループを1位で通過した近鉄ライナーズは順位決定戦でコカコーラ・レッドスパークスを迎えてホーム花園で戦いました。
結果は……!
ライナーズを長年ウォッチし続けている熱すぎる編集長、週刊ひがしおおさかの前田氏がほとばしる情熱でレポートします。
週刊ひがしおおさかの提供記事です。
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試合前、ワクワクとドキドキが混在していたコカ・コーラ戦。終わってみれば、71-11。60点差の大勝でした。今季1番のゲームを新型コロナ下で最もタイトな試合で見せ、明らかにライナーズが1つ階段を登ったと感じさせました。
トップチャレンジ降格後、コカ・コーラとの対戦は3度め。1度めは2019年10月のワールドカップ真っ只中にアウェー(福岡)で行われた練習試合でした。前半にリードをしながら、後半にペナルティを連発して21−31で逆転負け。
2度めは同じ年の公式戦。12月21日に福岡レベルファイブスタジアムで43-26と雪辱を果たしました。それでも後半の半ばまでは「ひょっとすると」と思わせる展開での17点差でした。
そして迎えた3度めが、60点差の快勝です。
11トライ71得点に目を奪われがちですが、注目すべきはコカ・コーラを前半8分の1トライに抑えたディフェンスです。
伝統的に
「取ったらその分取られる」
がチームカラーだったムラッ気チーム。トライラッシュのなか、ファンからも「いつ取られるのかとヒヤヒヤしていたらずっと取られなかった」と聞こえてきました。ディフェンスラインが乱れることも少なく、空虚に響きがちだった「ディシプリン(規律)」という合言葉も、説得力を増しています。
ゲームの入りは褒められたものではありません。8分に先制トライを奪われたあとに、連続2トライで逆転。しかしペナルティを連発して2本のPGを決められ、12-11に迫られたのが前半31分です。トライは取れているが自分たちのペースではない。
しかしここからが新生ライナーズでした。得意のラインアウトからモールでトライを奪えば、14番ジョシュア、12番ステイリン、13番片岡など能力の高いBKプレーヤーたちが積極的にボールを足にかけてコカ・コーラを翻弄。その動きにFWも応えます。
1番 田中が相手ボールをセービングし、9番ゲニアがボックスキックを上げ、ナンバーエイトのロロがそのボールを体を張ってキープする。
FWの動きにBKが反応し、BKが選択したプレーを全員が遂行する。トライを奪うという最適解に向けて一直線を引き続ける。
事前の想定とは違い、思い通りに試合が運ばなかったとき。決まりごとに終止するのではなく、決まりごとの中で状況を打開する「しんどい選択」を全員が続ける。
その成果が11トライの猛攻であり、70分以上に渡ってトライを許さなかった、60点差という衝撃的な結果です。
ライナーズは茨の道を選びました。強くなることをあきらめる選択肢も与えられながら、今まで共に暮らした仲間と別れを告げ日本一のチームになると誓い、新しい伝統を作る旅に出ました。
降格を機に、チームを任された有水ヘッドコーチは初年度からチームスローガンを「主体性」としチームを変革し続けます。
コカ・コーラ戦で選手全員が見せた
「勝利を最適解として、そこまでの一直線を個々が判断する」
は自主性とはレベルの違う、誰も他人のせず自分の行動に責任を持つ「主体性」が結実したと言えるでしょう。
しかし、これからが正念場です。この勝利を、日本中のライバルたちが見ていたのですから。
2週間後にトップチャレンジリーグ1位を賭けて戦う豊田自動織機はもちろんライナーズを丸裸にして臨んでくるでしょう。トップリーグのチームも「これが新しいライナーズか」と対戦を視野に入れてくるでしょう。
対策をされて、弱点を突かれて、それでも勝利をもぎ取ることができるチーム。それこそがライナーズが大目標にする「日本一のチーム」の必須条件です。
今シーズン、絶対に勝たなければならない試合はあと3つ。
4月3日(土)に豊田自動織機と争う滋賀県・布引グリーンスタジアムでのトップチャレンジの1位決定戦。
4月17日(土)2年連続のトップチャレンジ王者として挑む、花園でのトップリーグとのプレーオフトーナメント。
1回戦を勝利して、4月24日(土)にトップリーグ・レッドカンファレンス1位チームと東京・秩父宮で戦う2回戦。
この3つに勝利すれば8強。今シーズンの目標である「トップ8」を達成することができます。
期待の大物ルーキーの出場解禁はあるのか、あの変幻自在のトライゲッターの復帰はあるのか、昨シーズンブレイクしたあのバックローを見ることはできるのか。興味は尽きません。
日本一を目指すとは、こんなにも厳しいものか。勝つごとに、課題をクリアするたびに新たな試練がライナーズの前に立ちはだかります。
その困難さから、目をそらしたくかることもあるでしょう。かつてのように想定外の事態を言い訳にすることもできるでしょう。
しかし残念ながら私達ファンは、その試練をともに歩む楽しさを知ってしまいました。
厳しい選択を、誰のせいにもしないプレーを、今の苦しみを超えた先にある見たことのない景色を。見せてくれライナーズ。日本一のチームになって、みんなで喜びを分かち合うために。その過程を精一杯楽しむために。
text by 前田寛文(週刊ひがしおおさか編集長)
[週刊ひがしおおさか プロフィール]
東大阪の地域情報サイト・週刊ひがしおおさか。
地域のグルメやイベント情報を日々アップしていますが、特に力を入れているのはラグビー。
花園に拠点をもつラグビーチーム「近鉄ライナーズ」のことならおまかせ!
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