【高校サッカーインターハイ】大阪代表・近畿大学附属高校 / 「共鳴」が生んだ“真夏の大冒険”

2026年09月21日 / サッカー

高校サッカー夏の日本一をかけたインターハイ全国大会が、7月25日から8月1日まで福島県で行われ、
大阪代表として近畿大学附属高校と大阪桐蔭高校が出場した。大阪大会を制した近大附属は、12大会ぶり10回目の全国大会。
就任4年目の寺師悠斗監督にとっては、初めて全国大会で指揮を執る夏だった。
そして、近大附属は全国準優勝まで駆け上がった。
寺師監督が「真夏の大冒険」と表現した、その舞台裏を取材した。

激戦区・大阪から始まった「大冒険」

大阪は大会参加校が180校を超える、全国屈指の激戦区の一つだ。
「大阪はビッグマッチを一つ勝っても、また次にビッグマッチが待っている」
寺師監督の言葉だ。
大阪府1部リーグに所属する近大附属は、大阪予選の2次予選2回戦からスタート。
最も苦しんだのが、2戦目となった中央トーナメント1回戦の千里高校戦だった。1点を先制しながら追いつかれ、PK戦は10-9。大激戦の末、なんとか勝ち切った。
「悪い所が出てもうダメだというところから勝たせてもらったことで一気に吹っ切れた」
この試合を転機に勝ち進み、大阪を15大会ぶりに制覇。2013年以来となるインターハイへの切符をつかんだ。
しかし、順調にはいかず――。
大阪を制してから全国大会までのおよそ1か月、チーム状況は決して良くなかったという。
大阪を勝ち切ったことで、どこかに「達成した」という空気が生まれていたと寺師監督は振り返る。
そんな状態で迎えた全国大会。
近大附属には、今年のチームを象徴する言葉があった。
「共鳴」。
200人を超える部員を抱えるチームが掲げた、その言葉。
そして、もう一つ。
このチームには「相手が強ければ強いほど燃える」という特徴があった。
その性格が、全国の舞台で徐々に表れていく。

強敵と戦うほど、チームは「共鳴」した

初戦で長崎の名門・国見を破った。
2回戦、地元福島・帝京安積戦は、寺師監督が全国大会を通して「一番苦しんだ」と振り返った。
次に待っていたのは、テクニックを武器にする昌平。
「相手が強いほど燃える」。
選手たちの性格をよく知る寺師監督は、この試合前、ミーティングで一本の映像を見せた。
サバンナでハイエナが狩りをする映像だった。
「教育的にはどうかと思ったけど……」
そう笑いながら振り返った寺師監督が、選手たちに伝えた言葉はシンプルだった。
「お前ら、明日はこれや」
「ハイエナプレス」と寺師監督が語る、群れになってボールを奪いに行くプレス。
それが、はまった。
試合後、昌平のチーム関係者も近大附属について「とにかく粘り強い。やりたいことを徹底してきた。うちもそれにやられた」と評した。
続く準々決勝では宮崎の強豪・日章学園を撃破。
準決勝では兵庫の伝統校・滝川第二との近畿勢対決をPK戦の末に制した。
先制して勝った試合。ビハインドを背負った試合。0-0からPK戦までもつれた試合。
異なる展開を一つずつ乗り越えた。
そして気付けば、大阪勢として47大会ぶりとなるインターハイ決勝の舞台までたどり着いていた。
1978年の北陽高校以来、およそ半世紀ぶりだった。
強敵との戦いを重ねるたびに、チームは変わっていった。

決勝の日、目の前にあった「共鳴」

決勝当日。選手たちのウォーミングアップを私は間近で見た。
目つき。声。気迫。
大阪大会で見た彼らとは、また全然違った。
その存在感に圧倒された。
全国を勝ち上がる中で、一人一人が自信をつけ、自分が何をすべきなのかを理解している。
そんな空気を感じた。
実は決勝前日、選手たちは岡崎慎司選手の現役時代のとある映像を見ていた。
題材となったのは、プレミアリーグで奇跡の優勝を成し遂げたレスター・シティ。
誰がシーズン前、レスターの優勝を想像しただろうか――。
このフレーズ、この状況、このストーリーに藤川キャプテンは思ったという。
「これ、ウチやん」
自分たちの歩んできた道と重なった。
そして迎えた決勝。
寺師監督が「ラスボス」と語った相手は、サッカー王国の名門・静岡学園。
近大附属のメンバーはGK興山俊士。
DF清水彦、藤川澄生、森一翔、中谷竣太。
MF中澄恵大、金光哲平、岡本陽樹、福井健将。
FW山本翔大、久下彬。
形はいつも通り3-4-2-1。近大附属伝統の3バックシステムから攻守にハードワークする。
しかし、立ち上がりは静岡学園の時間だった。
近大附属は思うように前へ出られず、相手のリズムを崩せない。
寺師監督が「本当は0-0でクーリングブレイクを迎えたかった」と考えていた中で、その直前の1プレーで先制を許した。
両チーム、ベンチ裏に戻って体を冷やす。
嫌な流れになっても、無人のグラウンドには近大附属の大応援団の声、太鼓の音、そして虫の声が響いていた。さぁ、ここからだ。
クーリングブレイクのわずかな時間で、選手とスタッフが修正点を共有した。
「いろいろな話が3分間の中でできて、そこからすぐに改善できた」
ひるまず、持ち味のハイプレスからボールを奪い、得意のロングスローに持ち込む。
そして前半30分。
ロングスローを起点にキャプテン藤川の同点ゴール。
近大附属のスタンドの振動が、グラウンドにまで響いていた。
前半を終えて1-1。

貴重な同点ゴールを挙げたキャプテン藤川澄生。大会優秀選手

ハーフタイム。
選手たち同士での修正の声は、1秒たりとも止まらなかった。
「あそこのやられ方、もう少しこうできへんかな?」
「じゃあこうやって誘導しよう」
「やっぱりあの場所が狙い所やな」
「チェック頼むで」
上級生も下級生も関係ない。
キャプテンもスタメンもベンチメンバーも関係ない。
いろんな選手が、いろんな場所で声を掛け合っていた。
寺師監督によれば、「チーム発足当初から声を出す選手はいた。ただ、かつてはそれぞれが言いたいことを言うだけになり、まとまり切れないこともあった」という。
今は違う。
何を伝えるのか。その言葉をどう受け取るのか。
「言う側」と「受け入れる側」のディスカッションができるようになった。
目の前で飛び交っている言葉そのものに、このチームが全国大会を戦いながら積み重ねてきた成長が表れていた。そして後半。
先にペースを握った近大附属が、相手ゴール付近まで迫る。
しかし、追加点が取れない。
静岡学園がボールを持つ。
ドリブルで陣内を切り裂かれる。
それでも懸命に体を張り、スライディングで侵入を阻止する。
それぞれが持ち味を出して、一進一退の攻防が続いた。

両チームG前で激しい攻防となった

ピッチの外からも声は飛び続ける。
この日もスタメンのFWに、控えのFWが声をかけていた。
「もっとスペースを使って」「ここからだったら攻められるぞ」
試合に出ているかどうかは関係ない。
外から見えたものを伝え、その声をピッチの選手が受け取る。
そして、選手たちを包むようにスタンドから声援が響く。
ワンプレーごとに声が上がる。
ゴールへ向かえば、さらに大きくなる。
寺師監督は、その声が「確実にエネルギーになって、選手たちの足を動かしてくれた」と感じていた。
ピッチからベンチへ。ベンチからピッチへ。そしてスタンドから選手たちへ。
近大附属が掲げてきた「共鳴」が、そこにあった。
そして試合は後半アディショナルタイム。
静岡学園が獲得したコーナーキック。
時計は後半アディショナルタイム5分。ほぼラストプレー。
無情にもネットを揺らされた。
すぐに立ち上がる。
しかし、間もなく試合終了のホイッスルが響き渡った。
腰に手を当ててたたずむ寺師監督。
キャプテン藤川は悔しさをこらえながら、すぐに仲間のもとへ駆け寄り、言葉をかけた。
全国の頂点まで、あと一歩だった。
試合後、寺師監督はこう話した。
「スタンドのメンバーも、保護者の方も、家族も含めて、みんなで共鳴して戦うということ。それを具現化できた風景だったと思います」
キャプテン藤川が、この夏を振り返った。
「僕自身がこのチームを引っ張れたんじゃなくて、みんなでここまで来た」
200人を超える部員、スタッフ、保護者、OB、学校関係者。
その輪は、勝ち進むたびに大きくなっていった。
全国準優勝。

写真一番手前。就任4年目寺師悠斗監督。母校の指揮官として初の全国にして全国準優勝に導いた熱血漢

寺師監督が「真夏の大冒険」と呼んだ夏は、日本一まであと一歩のところで終わった。
それでも試合後、指揮官は胸を張った。
「悔しいですけど、誇らしかった」
そして、こう続けた。
「『近大附属といえばこれだぞ』というものを、今回の大会で作れたと思う」
就任初年度、選手権の大阪予選で誰よりもチームの得点を喜び、応援団のもとへ走って駆け寄り、笑顔でハイタッチを交わしていた熱き青年監督。

応援団も共鳴。この大会に向けてトリコロールの冷感ポンチョを用意、大応援団が大阪から駆け付けた

あれから4年。
監督の熱量に選手が応え、選手の声に仲間が応え、そしてスタンドが応える。
その響きは、全国の決勝まで届いた。
さぁ、次は冬の選手権。
福島で大きくなった「共鳴」が、次はどんな景色を見せるのか。
近大附属の大冒険には、まだ続きがある。

取材・構成 読売テレビアナウンサー 平松 翔馬

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